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キスして、殺して~「キラー・インサイド・ミー」 - 2011.09.17 Sat

以前から、映画&美術評論家の滝本誠の著書で再三にわたって登場していた、フィルム・ノワールと
いうジャンル。1940~50年代ごろのペイパーバックにあったような、甘いロマンスのかけらもない、
犯罪と暴力を扇情的に描いた小説群を、暗黒という意味のノワールと例えて賞賛したのは、フランスでした。

中でも、ジム・トンプスンは、滝本誠師父曰く、「善悪のボーダーなどどこ吹く風でモラルの外の世界を
タイプしてきた」乾いたニヒリズムで、他のペイパーバック・ライターとは一線を画していたということです。
ハイ、ワタクシハードボイルド云々とエバり散らしていた割には、トンプスン未経験です(恥
この辺は若い時に読んでいたら、人生ずいぶんシニカルな目で観てたんだろうなあ、という気にも
なりますが、老後の楽しみの手始めとしては、悪くないかもしれません。

ということで、今回はそのトンプスンの代表作のひとつ、「おれの中の殺し屋」の映画化、
「キラー・インサイド・ミー」(2010)をお送りします。







1950年代、アメリカはテキサスの小さな町で保安官助手をしているルー(ケイシー・アフレック)。
押しの弱そうなハンサムなこの若者は、適度に愛想があり、町の人々に好かれていた。
ある時、ルーは保安官に、町のはずれで勝手に商売をやっている娼婦を追い出せと言われ、
その家に向かう。
娼婦ジョイス(ジェシカ・アルバ)は美しく、蓮っ葉な女性だった。気も強く、ルーが保安官助手だと
知ると途端に口汚く罵り、激しく叩き始めた。それまで押し出しの弱そうな青年だったルーは、ジョイスの
攻撃で何かに目覚めたように突然豹変し、ジョイスをベッドに組み敷き、尻をスパンキングしはじめた。
ジョイスの泣き声でハッと我に返ったルーは、ジョイスに「ごめんよ」とやさしく謝った。
ふつうの女性ならこんな暴力男速攻で追い出すところだが、ジョイスはなぜか欲情してしまい、
ふたりはベッドの上でもつれあい、関係を結んでしまった。

なんかアレですかね、「もっとぶってほしい」な世界なんですかね。まあ、私が見た数少ないフィルム・
ノワールと言える作品に「L.A.コンフィデンシャル」がありますが、同時代のコレも、女に暴力をふるう場面
がありました。ま、でもノワールの女たちは、殴られても「なによっ!」みたいな気の強さも
持ち合わせていましたけどね。フェミニズムなんて言葉もなかった時代の話と言ってしまえばそれまで
なんですが、暴力の発露した瞬間をフィルムに焼き付けている「キラー~」の監督、
マイケル・ウィンターボトム侮りがたし、ですね。

それからジョイスとの情事に溺れていくルーだったが、彼には恋人がいた。教師をやっているエイミー
(ケイト・ハドソン)とはもう何年もつきあっているが、結婚には至っていなかった。彼女との
セックスもふつうにこなしているルーって、どんだけ…。

ある日、ジョイスは寝物語に、町の実力者コンウェイ(ネッド・ビーティ)の息子、エルマーが
自分にメロメロで駆落ちしたがってると聞いたルーは、エルマーを嵌めようと画策する。
実は昔、ルーはティーンエイジャーの時に小さな女の子にいたずらしていたのを兄に見つかり、
身代わりで兄が鑑別所に入っていた。兄は出所後、コンウェイのところで働いていたが、事故で
亡くなっていた。ルーはコンウェイが兄を殺したと確信しているが、誰もコンウェイには逆らえない。
復讐のチャンスだ。ルーの中でどす黒い感情が頭をもたげていた。

ここからは信じられないような凄まじい暴力の世界が展開されます。ルーを演じたケイシー・アフレックは
ご存じベン・アフレックの弟ですが、兄がガタイはいいがちょっと頭の弱いアンちゃん役が多いのとは
対照的に、線の細い、ナイーブな青年という印象です。彼をちゃんと見たのは実はこれが初めてなのですが、
彼の声、コレ地声でしょうか。かすれ気味の、まったく響かない、ジョー・ペシをもっと若くしたような
声質なんですね。この声にイラっとくる観客が多いのか、あまり好感を持たれないというのが、
逆にノワールにふさわしいかんじがしました。このカン高いハスキーボイスで「ごめんよ」と言いながら
何度も何度も彼女に……。女性は正視できないシーン続出です。

映画ではルーの独白で話が進んでいくのですが、彼がなぜ、こういう思考に至るのかというトラウマが
少しずつあらわになってくるにつれ、この恐ろしい青年の異常性が浮き彫りになってきます。
それでも、なぜ「だから殺さなければいけない」という結論に至るのかが理解できません。
観ている側は、彼だけの論理に基づく犯罪を次から次へと見せつけられるのみです。その辺、少し
コーエン兄弟「ノーカントリー」に出てくる、シガーという殺し屋の行動にも似ているかもしれません。

この映画でいちばん感情移入しやすいキャラクターは、おそらくエイミーでしょう。ちょっと身体の線が
崩れてきた三十代前半の結婚を焦る女教師で、やっとルーが結婚しようと言ってくれて、ふたりで
婚前旅行に出かけるその日に……。あの演技は素晴らしかったです。そして何の感情も抱かないルー。
彼の頭の中は、それを実行することでいっぱいで、エイミーはただ邪魔な存在だった。
だが、検察も手をこまねいて見ているだけではなかった。今や完全にルーを犯罪者と断定する検事たちは、
ルーをなんとか逮捕しようと試みるが……。

ベイビー、お別れのキスは、血とガソリンの味がしただろう?


私も、ノワールの底を覗いてみたくなりました。破滅へと続く道を転がり落ちて行く男と女を、
この年になった今なら、ある意味共感を持って読めるかもしれません。
それでも、トンプスン、そしてノワール・ジャンル作家らの毒はかなりキツイのだろうな、と
今から期待に胸膨らませる私も、かなりのド変態なんでしょうね(笑)。
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