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こうして、歌は作られる~「クレイジー・ハート」 - 2011.08.04 Thu

「…私の考えでは、私と別れてカリフォルニアを出発し、アリゾナのプレスコットへいくまでの
一週間に、彼は『フルムーンのたびに』をつくったことになる」
プリシラは、アーロンを見た。美しい顔に、聡明さに徹したきらめきがあった。ラジオから、カントリー・
ソングがやわらかく聞えつづけていた。
「ディッキーが、どんな状況で、どのようにしてその大ヒットを作詞作曲したかを、できるだけ詳しく、
あなたに調べていただきたいの」   (「旅男たちの唄」片岡義男)

日本人の心に染み込む歌って、今あるのでしょうか。私はいわゆるロックひとすじな音楽人生でしたが、
最近昔の欧米のポップスや日本の歌謡曲がなんだかいいなあ、と思う時もあって、年をとった証拠
なんでしょうかね。
アメリカ人の心、とでもいうべき音楽は、まちがいなくカントリー・ミュージックでしょう。
広大なアメリカ合衆国に住むほとんどの人々は、日本で言うところの地方在住者と言えます。
生まれてから死ぬまで同じ土地で過ごす。喜びも悲しみもすべてがその町での出来事。
そんな人々が聴く音楽は、陽気だけど少し悲しく、心沈む人のそばにそっと寄り添うようなブルースで
あるべきだ、と想像します。
そしてこの物語も、傷つきながらも必死に人生を送る人々に向けて歌われています。

ということで、今回は「クレイジー・ハート」(2009)をお送りします。
今回ちょこっとネタバレあります。ご注意ください。



アメリカのハイウェイは荒野を突っ切る形で伸びている。そこを一台のくたびれたバンが走っていく。
バンはとある田舎町のボーリング場にたどりつく。ここで今夜ショウが開かれる。その主役がバンの
ドライバー、昔はスターだったが今は落ちぶれて地方巡業をたったひとりで続けている、バッド・
ブレイク(ジェフ・ブリッジズ)だ。
ボーリング場でも、その田舎町に住む人にとっては、憧れのスターがやってくるとあって、酒屋の主人は
バッドお気に入りの銘柄の酒をプレゼントしたり、と皆歓迎してくれた。
ジェフがくたびれたカントリー歌手を演じてますが、その枯れ具合が絶品です!この人は昔からボンクラな
芸風でしたが、年をとってその演技に円熟の味が出てきました。彼はこの作品で初のオスカー主演男優賞を
獲りました。その翌年は「トゥルー・グリット」でオスカー連続受賞しましたよね。ショボくれた初老の
男性をやらせたら右に出る者がない、と言っても過言ではありません。

ショウの翌朝、隣で眠るオバサンを起こさないようにそっとモーテルを抜け出て、次の町へ。
そこで出会ったジーン(マギー・ギレンホール)に、なぜか心魅かれるバッド。
ジーンはシングルマザーで、四歳になるバディを地方紙の記者をしながら懸命に育てていた。
バッドはジーンの家庭に半ば強引に割り込んでくるが、バディとも仲良くなり、ジーンとも本気で愛し合う。

バッドは昔、とある若者にカントリー・ミュージックのイロハを叩きこんだ。若者はしばらくして大スター、
トミー・スウィート(コリン・ファレル)となる。それと同時にバッドの人気も下降し、立場は逆転していた。
しかしそれでも、トミーは昔の恩を忘れずに、バディを自分のコンサートの前座に指名する。
バッドは自分が惨めに感じていたが、金のためにしぶしぶ引き受ける。
トミーがきちんとバッドを尊敬し、立ててくれるところが好感が持てました。彼の才能を本気で愛しているのだな、と思いました。敏腕で厳しいマネージャーも含めて。
ジェフもコリンも、本人が歌っているのですが、上手すぎだろオオオ!!カントリー・ミュージックにあまり縁の
ない私ですが、「ウォーク・ザ・ライン」という、ホアキン・フェニックスが実在のミュージシャンを演じた
映画も好きでした。この二作品の共通点は、俳優本人が歌っていることです。
日本で言うと、先ごろ亡くなった原田芳雄みたいなかんじかな?ジェフ。
トミーはバッドに、ぜひ曲を作ってくれ、と頼む。

人生半分あきらめたようなバッドだったが、ジーンとの関係を大切にしはじめたことによって、曲作りも
少しずつ始めていた。
バッドがジーンの家のベッドで曲を作っているのを見て、ジーンが「私のベッドで曲を作ってる」と言う
シーンが印象に残っています。「私はあなたの曲を聴くたびに思い出すのよ」とか言ってたような気が
しますが、ジーンもまだバッドとの関係を迷っているのだとわかります。前の結婚が不幸に終わったジーンは、
愛に慎重で、バッドの押せ押せムードに少し引いてるようにも感じました。
ジーンを演じたマギー・ギレンホールは、「ダークナイト」のレイチェルよりも、こちらの方がはるかにいいと
思います。大都会のキャリアウーマンで、ハービーとブルースの間でどっちつかずで揺れる天然女より、
愛に傷つき、必死に生きようとしている地方のシングルマザーの役の方がハマってます。

バッドはアルコール依存症でもあった。長年の不摂生で身体もパンク寸前だった。彼の地元の長年の友人、
ウェイン(我らがキルゴア中佐ことロバート・デュバル)はバッドを心配して世話を焼いてくれている。
バッドがジーンのことをウェインに打ち明けるところなんて、カワイイvなんて思っちゃいました。
こういう時って、年齢関係ないんでしょうね。
バッドはジーンを自分の家に誘い、ジーンは休暇をとって彼のもとへ息子とともに行く。
だが…。ささいな、だが決定的なことがふたりの間に起こり、ふたりは別の道を歩み始める。
バッドはウェインに「酒をやめたいんだ」と相談し、どん底の状態から這い上がろうともがき始める。

そして…。
トミーの珠玉の歌声が広いコンサート会場に響き渡った時、本当に心が震えました。
音楽はT=ボーン・ハーネット。前出の「ウォーク~」の音楽も担当しています。彼の曲と、俳優が歌う
本物の歌声。いやージェフはともかく、コリンにこんないい感じに歌われたらたまらんです。
バッドはジーンへの想いを歌にしたのだ。それは傷ついた人の心にやさしく寄り添うものとなり、
バッドは再び歌への情熱を取り戻すのだった。

ラストで、とても切なく、それゆえ印象に残るシーンもあります。ぜひ一度、ご覧になってみてください。
カントリー・ミュージックを知らなくても、それはきっと、あなたの心に染みいるはずです。
人生の喜びを映した歌は人々に口ずさまれ、苦さからできた歌は心に入り込んでくるんだ、としみじみ
させてくれるいい映画でした。
バアさんになったら、カントリー・ミュージック聴いてみようかな。


(「旅男の唄」……「ミス・リグビーの幸福」ハヤカワ文庫収蔵)
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